趣味としての評論

趣味で評論・批評のマネゴトをします。題材はそのときの興味しだいです。

2017年・読書の旅

 

初めに

 2018年、平成最後の年が早くも上半期終了というところに来ています。皆さん読書はされますでしょうか?(唐突) 

 今回は週に一冊読み終えれたら上等、というレベルの遅読家である私が去年、即ち2017年にちゃんと読み終えることができた本の、その概要と感想、面白さを列挙します。ちなみにその年に読んだものは全部で38作品。書籍として単独に出版されたものは34冊でした(つまり、リストには雑誌に収録された短編などが含まれています)。

 

 

目次

1『頼むから静かにしてくれ  Ⅰ』レイモンドカーヴァー,村上春樹
2『職業としての小説家』村上春樹
4『ライト・グッドバイ』 東直己
5「秘密は花になる。」舞城王太郎
6『流れよわが涙、と警官は言った』P.k.ディック,友枝康子訳
9『一九八四年』ジョージオーウェル,高橋和久
10『みんな元気。』舞城王太郎
12『ザップ・ガン』P.k.ディック,大森望
13『自我論集』S.フロイト,中山元
14『武器よさらば』ヘミングウェイ,高見浩訳
15『頼むから静かにしてくれ  Ⅱ』レイモンドカーヴァー,村上春樹
16『2001年宇宙の旅』アーサーC.クラーク,伊藤典夫
18『図解雑学 フロイト精神分析鈴木晶
19『風と光と二十の私と・いずこへ』坂口安吾
20『やさしい女・白夜』ドストエフスキー,井桁貞義訳
21「ナイス・エイジ」鴻池留衣
22『村上春樹全作品1990-2000,6  アンダーグラウンド』村上春樹
24『暗闇のスキャナー』P.K.ディック,山形浩生
25『動物農場』ジョージ・オーウェル,高畠文夫
26『大江健三郎自選短篇』大江健三郎
27『銃』中村文則
28『騎士団長殺し  第1部顕れるイデア編』村上春樹
29『騎士団長殺し  第2部遷ろうメタファー編』村上春樹
30『雪国』川端康成
31『百年の孤独』ガルシアマルケス,鼓直
33『戸籍アパルトヘイト国家・中国の崩壊』川島博之
34『みずから我が涙をぬぐいたまう日』大江健三郎
35『図解 哲学がわかる本』竹田青嗣 監修
36『エレンディラ』ガルシアマルケス,鼓直  木村榮一
37「陋劣夜曲」西村賢太
38『夢十夜 他二篇』夏目漱石   *読んだ順に並べてあります 

【面白さ】を以下の基準でランク付けします。

  A. 最高程度に、語りたくなるくらい面白い。

  B. 文句なしに面白い。

  C. まあ面白い。読んで損はない。

  D. 懸念もあるがよし。読み返すことはない。

  E. 読むに費やした時間を少し後悔するレベル。お勧めはできない。

*評価は文学やものの価値について一切の知識を持たない素人の直感によるものであることをご考慮いただければ幸いです。また一部の著書については、「面白さ」という表現が相応しくないものがあり、それについては評価をしておりません。

 

 それでは拙評をどうぞお楽しみください。

 

 

 

1.『頼むから静かにしてくれ  Ⅰ』レイモンド・カーヴァー,村上春樹

  【面白さ・C】 村上春樹が尊敬しているらしいアメリカの小説家、レイモンド・カーヴァー(1938-1988)の短編集、奥さんと仲の悪い旦那さんの話が多い。「60エーカー」という、先祖代々の土地と誇りに固執するネイティヴアメリカンの話がなかなか渋くてよい。基本的に暗い話が多いが、村上春樹の各話解説があり、村上ファンにはそこが嬉しいかもしれません。

頼むから静かにしてくれ〈1〉 (村上春樹翻訳ライブラリー)

頼むから静かにしてくれ〈1〉 (村上春樹翻訳ライブラリー)

 

 

 

2.『職業としての小説家』村上春樹

 【面白さ・B】 村上春樹のエッセイ。村上自身が「小説家」というものをどういうものと捉えているかに触れられる一冊。相変わらず文章自体はクッソ読みやすいのでオススメ。個人的に面白かったのは芥川賞を取れなかったこと」(村上は二回候補になって、二回とも落選)について彼自身がどう思っているのかというところ。
職業としての小説家 (新潮文庫)

職業としての小説家 (新潮文庫)

 

 

 

3.砂の女安部公房

 【面白さ・B】 言わずと知れた名作。田舎に虫取りにいった都会人の男が、村人に騙されて砂で覆われたボロ屋に女と二人きりで放り込まれるという意味不明な展開から生まれるエロさが絶品の一冊。現代社会のなにやらが暗喩的に表現されているらしいですが、そんなこと分からずとも十分にシコれるレベルにエロい

 安部公房についての個人的な思い出は、高校時代の現国の教師が、「安部はな、ノーベル文学賞とるかどうかの男だったんだ。死ななきゃとれた」と言っているのを聞いて、「結局とれてねーじゃねーか」とか思っていた程度でした。

砂の女 (新潮文庫)

砂の女 (新潮文庫)

 

 

 

4.『ライト・グッドバイ』 東直己

 【面白さ・-】 映画(「探偵はBARにいる」)でおなじみの「ススキノ探偵シリーズ」の8作目。北海道の歓楽街ススキノで、違法行為と探偵業の二足のわらじで生計を立てる北大哲学科出身のチンピラ中年男性の活躍を描いた作品。実はこの文章を書いた一年と半年前ほどに読んだものなので、申し訳ないが全く内容を覚えていません。でも安定して面白いシリーズなのでおすすめです。

ライト・グッドバイ―ススキノ探偵シリーズ (ハヤカワ文庫JA)

ライト・グッドバイ―ススキノ探偵シリーズ (ハヤカワ文庫JA)

 

 

 

5.「秘密は花になる。」舞城王太郎

 【面白さ・-】 最近(?)活躍がめざましい舞城王太郎の短編。文芸誌「新潮」の2017年2月号に掲載された作品。残念ながらこちらも内容を忘れてしまっています

 舞城は読みやすいのと、(最近の作品は)割とわかりやすい物語が多いのが良い作家です。物語的な盛り上がりを重視した展開をよく使うので、短編でもしっかり面白い小説を書くひとです。僕は好きです。オススメは『土か煙か食い物』「熊の場所」「スクールアタック・シンドローム」『淵の王』です。

新潮 2017年 02 月号 [雑誌]

新潮 2017年 02 月号 [雑誌]

 
煙か土か食い物 (講談社文庫)

煙か土か食い物 (講談社文庫)

 
淵の王 (新潮文庫)

淵の王 (新潮文庫)

 

 

 

6.『流れよわが涙、と警官は言った』P.K.ディック,友枝康子訳

 【面白さ・D】 タイトルと早川版の表紙がクッソかっこいいことでおなじみのディックですが、本編については微妙なところが多いです。というか展開が唐突なのでめちゃくちゃ読みにくいです。それでもこちらはかなりマシなほう。あとにも出てきますが『ザップ・ガン』は本当に許せないレベルでした

 本作は、世間に超能力者である正体を隠しながら生きる人気エンターテイナーが、自分の存在を完全に抹消された世界に転移してしまう。という強い不安を読者に常に感じさせる構造。物語の、人間的な盛り上がりはラストの上級警官が涙するシーンだけなので、長さの割には物足りなく感じました。

流れよわが涙、と警官は言った (ハヤカワ文庫SF)

流れよわが涙、と警官は言った (ハヤカワ文庫SF)

 

 

 

7.神の子どもたちはみな踊る村上春樹

 【面白さ・C】 村上春樹の短編集。1995年(阪神淡路大震災オウム真理教の台頭)を受けての作品が多く、どこか寂し気な雰囲気が一貫してあります。表題作・神の子どもたちはみな踊る「かえるくん、東京を救う」が非常に印象的な物語で、特に「かえるくん」の結末には、村上の世界観というか、「世界は救われるべきである」という「願い」を味わうことができます。

神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)

神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)

 

 

 

8.色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年村上春樹

 【面白さ・D】 村上の割と最近の長編。出版時はいつも通り騒ぎになってましたが、全体の完成度ではもう一つでした。会社勤めの中年の男が、大学時代の初めに、高校の頃からの付き合いである親友四人に突然の絶縁を突き付けられたことについて、その真相を探るため、大人になった親友たちに会いにいくという物語。個々の挿話は面白い(村上春樹のたいへんよいところです)が、結末とそのまとまりについて考えると、「村上春樹」への期待がもともと高いのも相まって微妙、という感じでした。

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 (文春文庫)
 

 

 

9.『一九八四年』ジョージ・オーウェル,高橋和久 訳

 【面白さ・C】 ”Big Brother is watching you”でおなじみの”1984”の新訳版。架空未來の1984(ちなみに原書の出版は1948年。おぼえやすい)の大国「オセアニア」では、人々の生活は監視され、歴史は常に都合のいいように書き換えられている。いわゆるディストピア社会が営まれており、そういった自由のない世界で、ひそかに支配に反抗しながら生きる男の物語。抑圧された生活と、ときたま得られる秘密の解放の対照がなかなかよいです。「101号室」のシーンはとてもこわい(小並感)。

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

 

 

 

10.『みんな元気。』舞城王太郎

  【面白さ・C】 舞城王太郎の短編集。個人的に、舞城小説の特徴は著しい口語調とぶっとんだ物語展開、そしてどこか説教じみた哲学の語りにあると(私は)考えていますが、本書でもそういったものを存分に味わうことができます。最後に収録されている作品、スクールアタック・シンドローム伝染してゆく衝動的な暴力をテーマに、大変興味深い作品になっていて面白いです。読みやすい小説が多いのでオススメ。

みんな元気。

みんな元気。

 

 

 

11.国境の南、太陽の西村上春樹

 【面白さ・D】 村上春樹の長編小説。中年男性が人生の成功を味わいつつも、どこか物足りないところに幼馴染だった女性と再会し、昔を思い出しながら彼女と通じあうという内容(うろ覚え)。比較的地味な印象の作品。

 『ねじまき鳥クロニクルの前半をカットして単品に仕上げたものと聞いて読んでみたけど、これ自体は『クロニクル』とは違って割とリアリズム的。読み返すことはないかもしれないが、もう少し経ってから読み返せば、なにか良さが分かる気がするような一品。タイトルは確か、なにか洋楽からの引用だったような。

国境の南、太陽の西 (講談社文庫)

国境の南、太陽の西 (講談社文庫)

 

 

 

12.『ザップ・ガン』P.K.ディック,大森望

 【面白さ・】 当該年のワーストワンにして、オールタイムワースト小説の『ザップ・ガン』です。「ディックは映画はクッソ面白いし、『わが涙』も結構よかった気がするから、いけるやろ」と市営図書館で手に取ったのが運の尽き。文庫本ですが文字が小さいし、結構分厚いしで読むのに時間がかかりました。

 冷戦体制下の近未来で、米国のサイコ能力による武器デサイナーをしている主人公が、宇宙人の襲来(たしかそう)に対抗するため、ソ連側の美人女武器デザイナーと協力して最強の兵器「ザップ・ガン」を作り出すという内容。いま書き出すと「あれ? 面白かったかな?」と一瞬思いましたが、とにかく長くてわかりにくい

 私の読んだものには、巻末付録として、ディック自身による作品評価の短文がいくつかあるのですが、そこで作者自身が「『ザップ・ガン』はクソだ」みたいなことを言っていたのを、読んでガン萎えした記憶があります。

ザップ・ガン (創元SF文庫)

ザップ・ガン (創元SF文庫)

 

 

 

13.『自我論集』S.フロイト,中山元

 【面白さ・-】おなじみ、精神分析の開祖・フロイトの論集。多くの哲学者・思想家の著作について言えることだと思いますが、いきなり本人のものを読むのはオススメできません。意地で読んでも内容は理解できないので辛いです。それでも感想の述べるとすると、「快感原則の彼岸」(論文のタイトルです)は、フロイト後期欲動論・エロスとタナトスが生まれる過程を見ているようで、なかなかアツイです。

自我論集 (ちくま学芸文庫)

自我論集 (ちくま学芸文庫)

 

 

 

14.武器よさらばヘミングウェイ,高見浩訳

 【面白さ・】 ノーベル文学賞を受賞した米国の作家・ヘミングウェイによる長編小説。第一次大戦で軍医としてイタリア軍(たぶんそう)に参加した若者が看護婦のねーちゃんと仲良くなって、最後はボートで戦線を逃げ出す話。前線の「いつ死んでもおかしくない」という切迫と、ラストの静謐な雰囲気は非常に見事に描かれていますが、小説として飽きのない面白さがあるとは言えない出来。読みにくく冗長ともいえます。文学についての教養や磨かれた感性が必要なのかもしれません。私にはあまり理解できませんでした。

武器よさらば (新潮文庫)

武器よさらば (新潮文庫)

 

 

 

15.『頼むから静かにしてくれ  Ⅱ』レイモンド・カーヴァー,村上春樹
 【面白さ・-】 カーヴァーの短編集。内容を忘れてしまったのですが!(無能)
頼むから静かにしてくれ〈2〉 (村上春樹翻訳ライブラリー)

頼むから静かにしてくれ〈2〉 (村上春樹翻訳ライブラリー)

 

 

 
16.2001年宇宙の旅アーサーC.クラーク,伊藤典夫
 【面白さ・B】 S.キューブリックの映画としても有名な本作ですが、映画はクラークとキューブリックの共同で撮られたもので、原作者の一人が執筆したという意味で、こちらも本家本元の「2001年宇宙の旅」です。
 映画の方は、言葉による説明がほとんどないのですが、小説のこちらはクラークの文体で物語が綴られていき、多くの謎が解明されていきます。(素人が)一言で表すなら本作は「人類進化の物語」でしょうか。原始時代の猿、そして宇宙進出を果たした人類が、次のステップに進み、新たな存在と化すときにはいつもあの黒いモノリスがそばにありました。「映画は観たけど、よくわかんかったな」という人にもオススメです。
2001年宇宙の旅 (ハヤカワ文庫 SF 243)

2001年宇宙の旅 (ハヤカワ文庫 SF 243)

 

 

 
 【面白さ・C】 村上春樹の長編小説。恋人を失った少女に寄り添い生きようとする青年の物語。村上小説には珍しく主人公が若いです(とはいうものの、本編の大部分は大人になった主人公の回想録となっていますが)。
 初期村上春樹(というものがあれば)の冷笑的なスタンスの主人公の喋りと、数名の女の子、個性的でどこか寂しげな友人たち。飽きなく読み進められますが、主人公が頻繁に女の子たちとSEXするのでときおりムカつきます。読んで損はありませんのおすすめです。

 

 
18.『図解雑学 フロイト精神分析鈴木晶
 【面白さ・C】 フロイト精神分析理論をわかりやすく図説した一冊。「さわりだけ」という感じもありますが主要な理論のアウトラインは抑えているので入門にはぴったりです。読みやすく大変goodです。アマゾンでやけに高騰しているので図書館を探すのがよいでしょう。
フロイトの精神分析 (図解雑学-絵と文章でわかりやすい!-)

フロイトの精神分析 (図解雑学-絵と文章でわかりやすい!-)

 

 

 

19.『風と光と二十の私と・いずこへ』坂口安吾
 【面白さ・-】 坂口安吾の短編集。内容を覚えてないよう。なので安吾について述べるとこの人の文章では、『堕落論』に入っているエッセイ「日本文化私観」、そして小説の「白痴」が大変面白いです。古い人のわり文章が読みやすいのでぜひ読んでみよう!
風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇 (岩波文庫)

風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇 (岩波文庫)

 

 

 

20.『やさしい女・白夜』ドストエフスキー,井桁貞義訳
 【面白さ・-】なにも覚えてません(半ギレ)
やさしい女・白夜 (講談社文芸文庫)

やさしい女・白夜 (講談社文芸文庫)

 

 

 
21.「ナイス・エイジ」鴻池留衣
 【面白さ・C】 去年の群像新人賞でデビューした新人作家の二作目。私が読んだときは雑誌掲載でしたが、今は、しゃれたデザインの単行本になっています。元アイドルのAV女優がネット掲示板の未来人スレのオフ会で未来からきた孫に会うという奇妙奇天烈な物語。それなりに面白いですが、人間的な面白さには欠けるかもしれません。著者前作(つまりデビュー作)の「二人組み」の方はめちゃくちゃイイので是非読んでみてください。両作とも単行本『ナイス・エイジ』に収録されています。*著者読み方は「こうのいけ・るい」さんです。
ナイス・エイジ

ナイス・エイジ

 

 

 

22.『村上春樹全作品1990-2000,6  アンダーグラウンド村上春樹 
 【面白さ・-】 村上春樹が1995年に起きた地下鉄サリン事件の被害者の方々や、未曽有の人災に対応した現場の人々に直接インタビューを行ったノンフィクション対談集
 被害に遭った人々は普段通りの通勤電車の中で、サリンの匂いを嗅ぐもののそれが何かは気づかない。「おや、おかしいな」なんて思ったころには身体がうまく動かなくなっている。そのまま救急搬送されるかたもいれば、職場まで行ってからサリンの症状に気付く人もいる。元気に日々の生活に復帰した方もいれば、心や、あるいは身体に一生の傷を負った方いました。事件で亡くなった方もいます。彼らが元凶であるオウムについて抱く感情はさまざまです。フィクションではない、実際の経験が村上でなく当事者の言葉で語られる本書は、テロという直接暴力の被害者の言葉を聞くことに大変な意義があるものと思います
 また村上があとがきに寄せている、誰かの、恣意的で利己的な物語の恐ろしさについての考察と、またそれに対抗するための小説という発想は文学の存在意義の根底にある一つの希望にも思えます。

 

 
 【面白さ・】 村上春樹の長編小説。父親から離れ「家を出ていく」ことを決意した十五歳の少年の物語村上春樹特有の「不思議な感じ」が全開になった一冊。家出少年のカフカくん猫と話せる放浪老人のナカタさんの二人の物語が交互の章立てでつづられていきます。村上春樹の小説は読みやすい文章なんだか分からない物語の二つの特徴があり、本作はそれが顕著に出ています。
 カフカくんの本筋の物語は複雑でメタフォリカルに進んでいきますが、一方ナカタさんの物語は、比較的わかりやすく、また素直な物語の面白さがふんだんに込められています。私は村上春樹の小説では、これが一番好きです。
海辺のカフカ 全2巻 完結セット (新潮文庫)

海辺のカフカ 全2巻 完結セット (新潮文庫)

 

 

 
24.『暗闇のスキャナー』P.K.ディック,山形浩生
 【面白さ・D】 三度目の正直で読んだディック。やはり長く、大変読みずらいですヤク中の振りをしながらヤク中グループに潜入する捜査員の主人公が、次第に捜査員としての自分か、ヤク中としての自分かが分からなくなるという物語。結末まで追えばそれなりには面白いですが、読むには根性が要りました。
暗闇のスキャナー (創元SF文庫)
 

 

 
 【面白さ・C】 ”1984”と同じくらい有名な政治小説、「動物農場」が収録された短編集です。農場の動物たちが、賢い豚たちを筆頭に乱暴な農場主を追い出すことに成功しますが、彼らのリーダーとなった豚たちが人間にとって代わって圧政を強いるようになるという物語
 明らかに全体主義を風刺した構成になっていて、wikiによると旧ソ連の政治家たちがモデルになっているそうです。初めは気高い思想のもと為された革命が、腐敗した指導者によって書き換えられていく様が不安を掻き立てます。収録されている他の短編の「象を撃つ」という白人警官が暴れ象をライフルで撃ち殺すというごく短い物語があるのですが、そちらの方が僕は好きでした。

 *リンクの角川版には「象を撃つ」は収録されていないようです。ご注意ください。私が読んだものは「角川文庫クラシックス」というレーベルから1998年に出たものでした。

 
 
26.大江健三郎自選短篇』大江健三郎
 【面白さ・】 日本人二人目のノーベル文学賞作家・大江健三郎の短編集。コロコロコミックくらいの分厚さ岩波文庫に入っています。大江の短編のいくつかを初期・中期・後期の三期間に分類して大江の自選から収録しています。一つ一つが短いのであっさりと読めます。私のおすすめは「人間の羊」「空の怪物アグイー」です。
 大江健三郎は、どちらかというと生々しく残酷で、嫌な話を書くのが上手い気がしますが、「中期」以降の、大江自身の息子「イーヨー」(本名大江光。ピアニスト。知的障碍者。)をテーマとした「静かな生活」などの一群の短編は、危うさの中にも穏やかな、大江の望む平和の世界観が伺えます。鞄に入れると重いですが、読んで損なし。買いましょう。
大江健三郎自選短篇 (岩波文庫)

大江健三郎自選短篇 (岩波文庫)

 

 

 
27.『銃』中村文則
 【面白さ・B】 最近映画化作品が連発しているイケイケ芥川賞作家・中村文則のデビュー作にして芥川賞候補作品。死体の傍に落ちていた拳銃に惚れこんでしまった男がそれを密かに携帯し続けることの異様な興奮に溺れていくという物語。
 冒頭の数行の文章が神がったレベルで美しいのですが、物語が進むにつれてダレ始め、途中からは「これは期待外れかもしれない」とほとんど絶望で読み続けていました。それでもクライマックスの切迫はさすがの人気作家という感じで面白く読むことが出来ました。
銃

 

 

 
28.『騎士団長殺し  第1部顕れるイデア村上春樹
29.『騎士団長殺し  第2部遷ろうメタファー編村上春樹
 【面白さ・D】 村上春樹の最新の長編小説。奥さんに不明の理由で捨てられた中年画家が、「騎士団長殺し」というタイトルの日本画と出会うことで奇妙な世界にいざなわれていくという内容
 全作を網羅したわけではありませんが、村上春樹の中でも突出して難解かつ奇妙な物語であると感じました。また例の如く読みやすさは大変いいのですが、過去作に比して物語的な面白さに弱いところがあります。正直イマイチ。余談ですが今年七月号の文芸誌「文学界」に村上春樹の新作短編が載るのでみんな文学界買いましょう。
騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編

騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編

 
騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編

騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編

 

 

 

30.『雪国』川端康成
 【面白さ・】 おなじみノーベル賞川端康成の代表作。たいへん読みにくく、またこの時代の風土や文化を解さない無知であるところの私には、川端の良さを理解する能力に欠け、日本文学の最高峰の一個を肯定的に捉えることが全く出来ませんでした。おれにはないんだよ!教養が!(逆ギレ)
雪国 (新潮文庫 (か-1-1))

雪国 (新潮文庫 (か-1-1))

 

 

 

  【面白さ・】 こちらもノーベル文学賞受賞者。コロンビアの小説家、G.ガルシア・マルケスの代表作です。コロンビアの田舎町・マコンドにやって来たブエンディア一家の盛衰を描いた幻想小説
 ラテンアメリカ文学とかマジックレアリズムとか難しい言葉で評する人が多いですが、そんなことは一ミリも知らずとも十分に面白い私も知りません)ので絶対読みましょう。マコンドの人々の泥臭い人間劇と、町が滅ぶその瞬間まで描き切った壮大な運命の物語は絶品です。ちなみに私が一番好きな登場人物は、引きこもり・陰キャロリコン・ヤリチン・老け顔・革命家・高級士官といった七色の顔をもつアウレリャノ・ブエンディアくんです。
百年の孤独 (Obra de Garc´ia M´arquez)

百年の孤独 (Obra de Garc´ia M´arquez)

 

 

 

 【面白さ・C】 三島由紀夫の長編小説。同性愛の傾向をもつ少年が、青年期に終戦を経験し、そしてそれからの青春をつづった小説。常に自己を省みるような主人公の心の在り方にどきりとさせられるような手ごたえがあります。正直もっと生臭いホモ描写を期待していた手前、肩透かしを食らった感がありましたが、脇毛のシーンとかは結構キツイので読者は覚悟せよ。
仮面の告白 (新潮文庫)

仮面の告白 (新潮文庫)

 

 

 
33.『戸籍アパルトヘイト国家・中国の崩壊』川島博之
 【面白さ・C】 現在の中華人民共和国が「農村民」と「都市民」を分離し、戸籍隔離政策を、事実上の差別政策を行っていることを主題にして、中国政治の歪みをわかりやすい文体で解説した一冊。内容は良いのだが、ところどころに「過剰な私見」というか、若干保守的で偏った価値判断が見られるところがネック。オススメはできるが、書物に書かれてあることが、全て無条件に信ずるべきものというわけではないという前提を忘れずに読んでいただきたい(というか、この「この講談社+α文庫」というレーベル自体が、割と”右より”のようです)
戸籍アパルトヘイト国家・中国の崩壊 (講談社+α新書)

戸籍アパルトヘイト国家・中国の崩壊 (講談社+α新書)

 

 

 
34.『みずから我が涙をぬぐいたまう日』大江健三郎
 【面白さ・D】 三島由紀夫の自殺を受けて書いた(らしい)二つの短編小説が収録されたもの。どちらも結構イカれた感じの物語で一言で説明するのは不可能。それでもするとなると、表題作「みずから我が涙をぬぐいたまう日病気で瀕死の男が自分の少年期の思い出を「看護婦」に記録させんと内容をつづるもので、もう一方の「月の男」主人公が、旧友が交際する神経衰弱の米国人について、その思い出を語るというもの。やはりどこかイヤらしく、不気味な雰囲気があります。難解。
みずから我が涙をぬぐいたまう日 (講談社文芸文庫)

みずから我が涙をぬぐいたまう日 (講談社文芸文庫)

 

 

 
35.『哲学がわかる本』竹田青嗣 監修
 【面白さ・C】 いわゆるコンビニ本。高名な哲学者を一人数ページで概説したもの。わかりやすいが、その分あっさりしていて結局なんのことだったのかは分からないという読後感。哲学に初めて触れる、のならこういうものもいいんじゃないでしょうか(実際私がそうです)。過去の哲学者の思想のみならず、その生活や人生・逸話についても軽く触れていてそういうところは非常に良いと思いました。
図解 哲学がわかる本

図解 哲学がわかる本

 

 

 

36.『エレンディラ』ガルシア・マルケス,鼓直  木村榮一
 【面白さ・C】 ガルシア・マルケスの短編集。このひとは基本的にファンタジーを書くのでやはり収録作は全てファンタジーなのですが、どこか政治的な雰囲気がこもった作品もあります。
 オススメは表題作の「無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語」と、《選挙のために田舎町に訪れた政治家が、ほれ込んだ女の子がいたけどその子のお父さんの賄賂を受け取らないと貞操帯がはずしてもらえないのでエッチなことができず、しょうがないので抱きしめてもらう》という強烈な短編です(タイトルは忘れました)。面白いです。
エレンディラ (ちくま文庫)

エレンディラ (ちくま文庫)

 

 

 
37.「陋劣夜曲」西村賢太
 【面白さ・C】 日本を代表する純文学作家西村賢太先生の短編。文芸誌「群像」の2018年1月号に収録されています。読み方は「ろうれつやきょく」のようです。先生知性溢れる語彙が光ります。日雇い労働に従事する陰鬱な青年の日々を描いた作品。自らの怠惰や堕落を認識しながらも、どうにか生きていくしかない人間のもの悲しさをコミカルに描くことに見事に成功した逸品です(コメディではありませんが)。オススメです。
群像 2018年 01 月号 [雑誌]

群像 2018年 01 月号 [雑誌]

 

 

 
 
38.夢十夜 他二篇』夏目漱石
 【面白さ・B】 2017年最後を飾るのは、文豪・夏目漱石の短編集です。表題作「夢十夜は「こんな夢を見た。」で始まる十個の掌編で構成されています。中でも第一夜は、しょっぱなから大変な情景を描いていて、「さっぱり意味わからんけれど、確かにこの文章はとても美しい」と高校生であったころの私にも思わせる傑作です。おそらく日本で純文学とか呼ばれるものというのは、このようなものを指しているのだろうと思ったほどでした。
 他に収録されているものとして、漱石がロンドンに留学したときにお世話になっていたシェイクスピア研究家のお爺さんの話が好きです。当たり前ですが漱石著作権が切れていて、全作(たぶん)が青空文庫でタダ読み放題です。ヒマな方は読んでみてください。
夢十夜 他二篇 (岩波文庫)

夢十夜 他二篇 (岩波文庫)

 

 

 

総評

 以上が2017年に私が読んだ作品の全てです。いかがでしたでしょうか? 読んだ本をメモったりその感想を書いたりするのは、今回が初めてのことでした。

 やはり海辺のカフカ百年の孤独に当たれたのは大変ラッキーだったと思います。この年は他にも、カラマーゾフの兄弟』『地下室の手記ドストエフスキー)や『夜間飛行』サン・テグジュペリ)、善の研究西田幾多郎)などにも挑みましたが、途中でギブアップしました。もう読書を趣味と騙るのはやめておこうかなと考えております。

 また、「一週間かけて読んだ本の内容を完全に忘れていることがある」という事実を本稿の執筆にあたって突き付けられたのは、個人的にクる事実でした。でもしょうがないですよね。簡単に忘れられる内容の本を書いたという意味では、責任は作家さんサイドにあるのではないでしょうか(不遜)。

 

 ここまで読んでいただけたことにお礼申し上げます。もし記述に何か間違いがあれば指摘していただければ幸いです。それでは。